ゼミ授業「防災とサバイバル」
- 球 羽
- 2月10日
- 読了時間: 9分
更新日:2月11日

初回のゼミテーマは「防災とサバイバル」。小学生高学年~中学生までが科学に興味を持ってもらうための時間をデザインしました。
勉強が最初から好きな生徒はほとんどいません。「勉強が好き」な状態の生徒を教えるのは簡単です。意欲があるので、こちらが指示したことはやってこれますし、興味があるので成果にもすぐつながります。そうした生徒をどこまで伸ばせるかももちろん大事な尺度です。
ただ、私は「勉強が好きでなはい」状態の生徒を「勉強が好き」な状態に持っていくことに真の教育的価値があると思っています。そして、これが最も困難です。

勉強が好きではない原因は様々です。考えられるだけでも
勉強に必要な体力がない。
勉強をするにも基礎体力は必要です。小学生の本分は遊びであり、それは削ってはいけません。しかし、遊び疲れて勉強する体力が残らない場合は、まずその体力をつける必要があります。
勉強に起因する人間関係が嫌だ。
学校で勉強していると、先生が隣にやってきて「この問題違います~、正しくはこうやるんです。」と高圧的に教えてきてみんなの前で恥をかくからいやだ、という声もあります。勉強しているところを大人に隠そうとする生徒が一定数いますが、そうした心でやっていることがあるようです。
勉強より楽しいことがやめられない
スマホはもちろん典型例ですね。やめられないように、やめないようにい色々なアプリが全力で工夫しているので、その引力を振り切るには第3宇宙速度並みのエネルギーが必要です。ただここで注意なのが、例えば野球少年がいい調子で野球に打ち込んでいる際に野球から無理に引きはがしてしまうと、冬場の凍り付いた車から無理にはがしたワイパーのような心になってしまいます。ささくれてしまいます。

などなど。人の数だけ悩みがあります。大人と同じように子供も悩みます。そして、それらが複雑に絡み合っており、一つ解決してもまた一つ出てきたりします。よく「勉強には人間力が大事」と言われますが、半分はあっていると思います。もう半分は「勉強をできない理由をつぶしていくのが大事」だと私は思うわけです。
なので、生徒と仲良くなるところから始めて「勉強に取り組めない真の理由」を探して対処することが結果近道だと私たちは考えています。
親御様にもご家庭での接し方、過ごし方について協力を求める場合も多いです。短期的な結果を出すには遠回りですが、中長期的に自律した真の勁さ(強さ)を手に入れることを是としていますので、そこに賛同していただける方は一緒に学んでいきましょう!
…前置きが長くなりました。
ゼミでは「勉強を好きになる」の部分にピンポイントでアプローチすることを目的としています。勉強を好きになる方法にもいろいろありますが、また長くなりそうなので手短に。
教養の上限突破
学校ではカリキュラムが決まっており、ある程度学んだら次の範囲に進んでしまいますが、ここでは疑問があればそれをどんどんと深めていく場です。水が100℃で沸騰することに疑問を持っていいのです。そもそも温度も人間が設定したものであることや、水蒸気であれば100℃以上になることなどにも触れられます。私の知識の範囲内にはなってしまいますが、そこまではどこまででも話を膨らませ、「ナゼ?」を提供してあげています。知識同士は科目の垣根を越えてつながっているものなので、その学際的な喜びに触れてもらい勉強の楽しさを知ってもらいます。
自分の意見を言ってもバカにされない環境
よく生徒から聞くのが「みんなの前で発表するのがいやだ」ということです。正解不正解があり間違えたらからかわれる、オリジナリティある素敵な意見でも、子供同士でバカにされる、などです。当塾のゼミの時間では、意見を発してくれた際にそれをバカにすることは禁じています。また、その意見を私がしっかり拾い、無駄な意見がないように気を付けています。自分の意見を臆することなく発表できる力をつけます。
これらの目的が実践される環境がゼミです。

今回は科学を好きになるために「サバイバル」を軸に興味を深めた軌跡を紹介します。
第一回:サバイバルの知識
まずは興味を持ってもらうことが先決なので、Youtubeのサバイバル動画をともに視聴しました。エド・スタフォード氏のサバイバル動画は生徒にも好評で、ゼミのあと自分でも見てくれていたようです。
つかみとしてはばっちりです。まずは「ここにいたら楽しそう」と思わせないと学びが始まりません。運動の前にストレッチをするように、勉強も緊張して凝り固まった姿勢から柔軟な脳に切り替えてやらないといいものになりません。
宿題で火おこしについて調べてきてもらいましたが、よくやってきています。
エド氏の再生リスト↓
第二回:火おこしの科学
学校でも火おこしは必ず体験すると思いますが、火おこしや火に関して考えることが科学の入口です。火とは結局何なのかを考えると、原子分子の理解が必要であることに行きつきます。理科としてはもっと先の、中学校2年生あたりの話ですが、科学の現象を理解しようと思うとどうしても必要になる概念です。
今まで「二酸化炭素」や「水素(みんな「水素の音~」が入口なのは残念ですが笑)」あたりは知っているので、火事の際にハンカチで口を押えてしゃがみながら移動するように言われた経験から原子分子の重さの話まで結び付けました。

第三回:身近にある電気
前回原子や分子の話ができたので、理系が苦手な子ならみんな苦手であろう電気の話にも移れました。電気はなんとなくびりびりするもの、という理解からのスタートですが、原子分子の理解がされていると電子の移動が電気になっているという部分の飲み込みも早いです。目に見えない世界の話なので、実験のYoutubeや現象(雷など)から想像してもらうしかありませんが、エネルギーとして利用のしやすい電気にいかに支えられているかはよく実感できたようでした。

第四回:宇宙の神秘
原子分子の話が楽しかったらしく、宇宙の話も聞きたいという声が多かったので、宇宙の話に切り替えました。宇宙って何?と言われてもピンとこないのでYoutubeの人工衛星やスペースデブリの動画を活用して「空のむこう」の世界があることとそこでの物理法則の違いについて実感してもらいました。
4回目にもなると自分の意見を言うことに臆することが減ってきており、
「ゼミの時間めっちゃ楽しい」
「いいね、なんで楽しい?」
「自分の意見を言えるから」
と返答があり、逆に学校では意見が言いづらい環境なのだろうかと不安になりますね。意見を言える言えない、にはもっと深い議論の余地がありますが、それはまたメルマガ等で話します。
第五回:身近な石
Dr.STONEさんを見るのが最も勉強にはなります。まず。言っておくと。ただ、自分も東工大の金属材料を出てるので、どうしてもこの手の話はしたくなります。「鉄は神様からの贈り物」が標語でしたが、これは私も信ずるところがあります。
日本刀を例に出して、鉄の不思議な性質と日本刀の複合材料としての素晴らしさ、スカイツリーと東京タワーの形状の違いなど大学での話をたくさんしてしまいましたが、不思議なもので講師が熱を帯びているときが一番子供たちも楽しそうなんですよね。子供時代を振り返れば当たり前ですが。これは親と子供の関係でもほぼ同様に成り立つので、親が何かに打ち込んでいる様子は子供に絶対に+の影響を及ぼします。子供に立派になってほしければ、まずは親が見栄を張ってでも学び続ける姿勢を示さなければいけません。
第六回:食料の確保
サバイバルの話に戻り、食料の確保、中でも野草についての導入です。科学は事物を細分化して考えます。ただ、ずっとその話でも飽きてしまうので身近にある可食の野草等について学びました。
高知県は野草の宝庫であり、薬草ハンターさんも来られているレベルです。可食野草の知識は防災で役立つだけでなく、身近に歩いているときの野草にも名前があり、性質があり、暮らしがあることを想像できるようになります。牧野博士が顕著ですが、身近なものに関心を寄せられることそのものが育てられる才能だと思います。

第七回:地震
サバイバルが始まってしまうきっかけの一つに地震があります。高知県は常に南海トラフ巨大地震の危機にさらされていることもあり、生徒の関心も高いです。しかし、近年は高知県近郊で巨大地震は起こっていないこともあり、具体的なイメージにはまだ乏しいです。東日本大震災を関東で経験した身として、その映像をもとに地震のメカニズムの理解と脅威を伝えました。
世界には平和であってほしいです。子供が毎日の暮らしにおびえることなく、幸せに生きていってほしいと思いますが、大人がどれだけそう願っていても恐らくそれは叶いません。外交問題、少子高齢化のしわ寄せ、巨大地震など、今後50年以内に起こるであろう有事はいくらでも思いつきます。これまでの50年よりも厳しい時代になると私は思います。その際に、「君はありのままでいいんだよ、成長せず、優しい大人に囲まれてすくすく育ってね。」とは残酷すぎて言えません。
平和ではなくなった際に、頼れる大人がいなくなった際に頼れるのは己の肉体と頭脳です。これを鍛えることこそが有事への最大の備えではないでしょうか。強い人間でないと生き残れない時代は長く続いていました。今はそうでもないですが、またいつ時計の針が戻るとも限りません。私は接する子供たちには、ぜひ軽い危機感は持ってほしいと思っています。気を病むほどではないものの、頑張らねばならぬと感じられるほどの危機感を。
第八回:発表
以上をまとめ、文章を組み立て発表する経験を積ませています。もちろん入試でも小論文等あるのでその対策に資するものになりますが、自分の体験や考えをある程度のボリュームをもったカタマリとして文字にしたため発表するスキルは、リーダーシップと密接にリンクしています。
リーダーだからそのスキルがつく、という側面もありますが、そのスキルがあるから集団の中で自然とリーダー格になる(のでリーダー経験が積めてますますスキルがつく)のという流れもあります。これは鍛えられるスキルなので、発表が怖いと思う気持ちを取り除ける環境を提供できればトレーニングする価値があります。




最初は発表が怖いと言っていた生徒も、しっかり文章をしたためて発表してくれたのでとても成長を感じます。新しいことを学ぶための姿勢を涵養するのがゼミなので、初回の「防災とサバイバル」で達成したかったことはクリアできたなという私の安心にもつながりました。改めて、参加してくれた生徒の皆様、私を信頼して通わせてくださった親御様、ありがとうございました。
おわりに
次回は「夜景と社会」というテーマで、理科から社会に移ります。私が夜景観光士の資格を持っていることもあり、夜景と社会を結び付けて楽しい授業を構成できると思います。私にとってもチャレンジですが、生徒と一緒に学んでいきたいと思います。
高知県にお住いの方はInstagramからご連絡いただければ見学・無料体験のご案内をさせていただきます。高知県以外にお住いで物理的に通うのが難しい方はオンラインでもゼミに参加できるプランを用意しています。以下のリンクから詳細をご確認ください。「勉強を好きになる」ための修練場に、ぜひ参加してみませんか。
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